2010年5月4日火曜日
月天子

私はこどものときから いろいろな雑誌や新聞で 幾つもの月の写真を見た その表面はでこぼこの火口で覆われ またそこに日が射してゐるのもはっきり見た 後そこが大へんつめたいこと 空気のないことなども習った また私は三度かそれの蝕を見た 地球の影がそこに映って 滑り去るのをはっきり見た 次にはそれがたぶんは地球をはなれたもので 最後に稲作の気候のことで知り合ひになった 盛岡測候所の私の友だちは ---ミリ径の小さな望遠鏡で その天体を見せてくれた 亦その軌道や運転が 簡単な公式に従ふことを教へてくれた しかもおゝ わたくしがその天体を月天子と称しうやまふことに 遂に何等の障りもない もしそれは人とは人のからだのことであると さういふならば誤りあるやふに さりとて人は からだと心であるといふならば これも誤りであるやうに さりとて人は心であるといふならば また誤りであるやうに しかればわたくしが月を月天子と称するとも これは単なる擬人でない 宮沢賢治『雨ニモマケズ手帳』P105〜 『月天子』
2010年5月2日日曜日
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