2010年5月27日木曜日

2010年5月23日日曜日

2010年5月4日火曜日

豊川用水





2010-02-07

月天子


私はこどものときから              いろいろな雑誌や新聞で             幾つもの月の写真を見た             その表面はでこぼこの火口で覆われ        またそこに日が射してゐるのもはっきり見た    後そこが大へんつめたいこと           空気のないことなども習った           また私は三度かそれの蝕を見た          地球の影がそこに映って             滑り去るのをはっきり見た            次にはそれがたぶんは地球をはなれたもので    最後に稲作の気候のことで知り合ひになった    盛岡測候所の私の友だちは            ---ミリ径の小さな望遠鏡で           その天体を見せてくれた             亦その軌道や運転が               簡単な公式に従ふことを教へてくれた       しかもおゝ                   わたくしがその天体を月天子と称しうやまふことに 遂に何等の障りもない              もしそれは人とは人のからだのことであると    さういふならば誤りあるやふに          さりとて人は                  からだと心であるといふならば          これも誤りであるやうに             さりとて人は心であるといふならば        また誤りであるやうに              しかればわたくしが月を月天子と称するとも    これは単なる擬人でない   宮沢賢治『雨ニモマケズ手帳』P105〜 『月天子』